まず,以下の 2 つのファイル (MS Word) を見て欲しい.
競争的研究資金のうち,件数や総額という点では間違いなく日本最大と思われる科学研究費補助金 (科研費) の交付申請書の様式である.科研費というと文科省と一般には思われている気がするが,モノによって文科省が所管しているものと日本学術振興会が所管しているものがある.例えば私が代表者になっているものだと,若手研究と呼ばれる種目は前者,萌芽研究と呼ばれる種目は後者になる.
というわけで,各種書類の提出先がそれぞれ異なる.しかし書くべき内容はほぼ同じものである.
ということを踏まえた上で,上記の 2 つの Word ファイルを見比べてみたい.ほぼ同じ書類なのに,文科省と学振のそれぞれが独立して様式を作っているということがわかる.単に一番上の宛名の部分だけ変えれば済むだけのはずなのにである.もっと言えば,そんな部分は空欄にしておいて研究者に記入させればいいのだから同じフォーマットでよい.すげー無駄.ああこれが縦割行政というやつか (←ちょっと違う
というか,そもそもがである.
ここに書く内容のほとんどは,機械的に埋められることなのだ.この交付申請書は,採択された課題の代表者が各年度の頭に提出するものであって,研究の提案・審査のためのより詳細な書類がもっと以前に提出されている.交付申請書に書くべき内容は,ほぼそのサブセットである.だから,この書類の提出は本質的に形式的なものである.本来は,提案時の内容から変更がある場合だけ提出させれば済むはずだ.(まあ,提案時の予算からは必ず減額されて採択されるのが慣わしなので,必ず変更が生じるんだけど,そもそもその慣わし自体がどうにかならんのかという話でもある)
科研費の年度当たりの採択件数は約5万件にのぼる (H18の採択件数 (新規 + 継続) は 54500 件).交付申請書を含めて関連書類を作成するのにざっと 1 時間かかるとすると,日本全国で合計5万時間,つまり5年間強に相当するの研究者の時間が浪費される.もちろんそれに伴って,学科事務,部局事務,大学本部,本省と膨大な事務作業と紙の消費が発生している.そして,そんな多大な労力を費して作成された膨大な紙の束は,実質的に新しい情報は何一つ含まない.
なんとかなりませんか?
最終更新時間: 2009-01-04 15:31