日本やアメリカで使われているテレビの信号規格 NTSC では,1 秒間に 30 フレーム (30 fps) の映像が流れるってことはよく知られている.実はこれ,正確にいうと 29.97 fps であるというのは映像編集とかをやる人は知っているに違いない.もっと正確にいうと,モノクロの時代は 30 fps だったのが,カラー化されたときに 29.97 fps に変わったのだそうだ.ちょっと調べる機会があったのだが,これがまた奥深い.理解した範囲でまとめてみる.ていうか時代はディジタル放送に突入中だというのに今さら何やってますかとかいう話は置いておく.
ちなみに NTSC は National Television Standards Committee の略.一次情報は ITU-R BT.470-6 Conventional television systems として読めるらしい.買うと 28 スイスフラン.2500 円くらいか.意外と安いな.まあ読む気しないけど.
参考にした情報は以下の辺り:
モノクロだった頃に決まっていた数字は,走査線 525 本,フレームレート 30Hz,音声搬送波 4.5MHz (FM 変調).この辺の数字はざっくり決めたに違いない.
カラー化するときに,従来との互換性を保ちながら色信号をつっこむ必要が出て来た.走査線 525 本と音声 4.5MHz は変えられない(フレームレートや水平周波数は同期信号があるのである程度は大丈夫).かつ,全信号の帯域は同じ幅につっこみたい.何も考えずに RGB 信号を送ろうとすると 3 倍の帯域が必要になって,テレビ放送のチャネル割り当てが大騒ぎになる.
というわけで着目されたのが,映像信号は水平周波数ごとにピークのあるスペクトルを持つ傾向にあるという点(∵ ラインごとに似た信号が繰り返されやすいから).
RGB 信号を輝度情報と色情報に分ける.輝度情報は従来の NTSC と同じように送る.色情報はある副搬送波に乗せる.で,この輝度信号と色信号を重ねて送るわけだが,その際に輝度信号のピークとピークの間にちょうど色信号のピークが来るように配置してやる(周波数インタリーブ).そのためには,色副搬送波の周波数が,水平周波数の 奇数/2 倍であればよい.色信号だって水平周波数ごとにピークを持つはずだから,全体としてスペクトルのピークが交互に並ぶことになる.
次に問題になるのが,音声との干渉の問題.モノクロの場合は,音声搬送波 4.5MHz まで映像信号成分が届かないないので,干渉を気にする必要がなかった.カラー化する場合,色副搬送波の周波数は,色情報を伝えるのに十分な帯域を持つように高くする必要があるので,音声 4.5MHz に近くなってしまう.よって妨害を防ぐため,音声も輝度信号と同様に,色信号のピークとピークの間に現われるようにしたい.これには音声搬送波 4.5MHz が水平周波数の整数倍であればよい.
実際の値は以下の通り.音声搬送波 4.5MHz の整数分の 1 で,できるだけフレーム周波数が 30Hz に近くなるものを選ぶ.走査線は 525本なので,
と決めた.色副搬送波周波数は水平周波数の 奇数/2 倍で,色信号の帯域を考えて
とされた.
色信号の搬送波が水平周波数の 奇数/2 倍になっていることで,走査線ごとに色信号が半周期ずれるようになっていて,縦縞のようなものが見えるのを防ぐ効果もある.ついでに走査線数も 525 なので,フレーム間でも位相が反転して相殺されることになる.
てな具合に規格の数字の依存関係としては実は音声信号が基準になっている.一方,実際の機器の構成としては色副搬送波周波数が他のすべての基準になっていて,高い精度が要求される.
* [sho] ためになりました.ありがとうございました. (2013-02-21 16:26:31)
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最終更新時間: 2012-02-13 02:02
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